【戦略記事】リミテッドのサイドインアウト、貧者の勝ち方について【コラム】
我々は探求をやめてはならない。そして、我々のすべての探求は、最終的にはじめにいた場所に戻り、その場所をはじめて確認することである。
―イギリスの詩人、T・S・エリオット
「こちらサイドチェンジありません。」
というセリフを構築戦で聞いたことはあるだろうか?
3ゲーム目開始前にまれに聞く程度で、ほとんどの場合そんなセリフを聞くことはないはずだ。構築戦のデッキは60枚ではなく75枚で戦うもの、という認識が当たり前だからだ。どんなプレイヤーでも、バントカンパニーや、親和や、奇跡や、もしかしたらグリクシスシーフ(!)とか、メタ上に存在するさまざまなデッキを思い浮かべながらサイドボード一枚一枚とにらめっこした経験はあることだろう。
しかし、リミテッドではどうだろうか?
プールの中からボム、除去、クリーチャーを強い順に23枚・・・・よし、できた!
傍らには、ドラフトでは20枚以上、シールドなら60枚超の選ばれなかったカードたち。
構築よりも、もっともっと多いこれらサイドボードたちに眠る宝は軽視されがちだ。
この記事では、隠された宝を探す手掛かりとして、
◇【平均P/T】の変更
◇【相対的デッキパワー】の評価
◇扱う【マナリスク】の変更
の3つの視点について述べていこうと思う。
<垂直落下><帰化>以外にも、宝はその中に眠っているのだ!
◇【平均P/T】の変更
リミテッドでは一般に2/1/3よりも2/2/2、3/2/3よりも3/3/2のほうが有用とされる。
対戦相手のライフを削る早さ・交換できるカードの広さがその理由だ。
ただしそれはあくまで「一般に」でしかない。今の目的は、『目前の40枚を粉砕すること』それだけだ!
P/Tの評価はまさに相対的なもので、相手のデッキによって変わる。
以下に良くある相手のデッキと、→増やしたいP/Tを載せてみる。
・大量の2/2/1、熊とコンバットトリックで押し切る赤黒デッキ
→2/1/3 3/2/3 少数のデカブツ 3/3/2や3/2/2飛行out
・2/1/3壁、3/2/2, 4/3/2飛行で殴る青白デッキ:
→大量の3/2、2/2など地上の頭でっかち、熊in 重除去 壁out
・5/5/4、4/3/4など優秀なスタッツで殴る緑系ミッドレンジ
→4/5/2、2/3/1など。
・お互いに地上を並べ合う展開になるとき:
→限定的回避能力持ち生物(5/3/3森渡りとか)
2以上のパワー修正を与える装備品 など
デッキの平均P/Tを相手に合わせて変えることができれば、戦闘を有利に進められる。
戦闘は、リミテッドの根幹である。
すなわち勝てる!(3段論法並感)
したがって、ドラフト後半ではどうでもいいカードをカットするよりも、限定的だがあるゲームには大きな影響を与えるカード(特に生物)をピックすることをお勧めする。
◇【相対的デッキパワー】の評価
rizerさんによれば、リミテッド、とりわけシールドでは、
①対処難のボム(平均カードパワー)、②安定性(及びキルスピード)、③消耗戦のいずれかがゲームが決めるポイントとなるとある。これはまさにその通りで、デッキ構築段階からこのどれかをデッキの勝ち筋として意識することは大切だ。
話を戻そう。サイドボードに残されたカードは通常、使いどころが狭い “細い”カードであることが多い。それらを採用することはリスクを伴う。ではどのような時がそのリスクを取るべき時なのか・・・・。
それは、相手のデッキがかなり強い・・!と感じた時。戦力差を覆すリスクテイクの時だ!
通常、以下2種のどちらかの戦略に振り切ることになる。すなわち
・土地を切り詰めアグロカードを詰め込む
・色をタッチしてカードパワーの向上をはかる
の二つの戦略である。前者は①③を犠牲にし②での勝利を目指し、後者は②を犠牲にし①③での勝利を目指す戦略である。基本的には①③を目指したデッキをメインデッキとし、強いデッキに対し前者の戦略をとるのが良い。(シールドの環境によっては、この切り替えに伴い第二色の切り替えも大いに許容される。)
マリガンやマナリスク云々は次の章で述べることとして、ここでは採用するべき“細い”アグロカードについて触れる。
・ラッパやアクトなど振れ幅の大きいスペル
アクトは差し引き盤面最強2体分の、ラッパはいわずもがなな働きをする。
特にアクトは筆者大大大好きである。(愛)
・“ハマればつよい”オーラ、装備品、
「トロール皮(2G:+2/2. 1G:再生)」「ゴブリンの戦化粧(1R:+2/2 速攻)」などがそれにあたる。オーラや装備品は1:2を簡単に取られてしまうし安定せず、典型的“入れてはいけない”カード群のひとつである。しかし、リスクをとって強いデッキに立ち向かう際には、頼もしい武器にもなりうる!
軽めの回避能力持ち(飛行または威迫など)につけるのがベスト、(相手は除去をもってない!)と強く念じることが大切である。
+カウンターを載せるバットリ(道理を超えた力など)もこれに当たる。
・1UU:取り消し
「先手」で「軽いパワー2以上の回避能力を詰めて」いて「相手がミッドレンジ」の場合考慮に上がる。基本的にはテンポ損するだけのカードだし、構え続けることにコストはかかる。リミテにおける打ち消しは数あるカードの中でも最もカードパワーのブレが大きなカードである。序盤に構え続けるだけではカード一枚以下だが、アヴァシンを除去できるカードにもなりうる!
通常リミテッドでは、打ち消しはまったくケアされないのも利点である。
貧者プールでは予想以上の働きを見せることがあるので検討する価値はある。
・4/5/2、3/5/2デメリットなど前のめり
バットリではなく除去で道をこじ開けられば強いが除去があるのは強いアグロなので今回は控え目に記載。
これら細いアグロカードは、うまく使えばプール富豪に下剋上することができます。
奴隷は・・・・二度刺すっ・・・・!!
◇扱う【マナリスク】の変更
基本的に、“貧者”の側はアグロ的なデッキを組んだほうが良い。以下二つの理由による。
・つけこむべきマリガン事故の特質
貧者が速度と安定感を武器に勝つためには、相手の事故につけ込む必要がある。
活路たる7:6の最初の差が、ターンが進むにつれ、【3ターン後】→10:9 【23ターン後】→30:29と相対的に失われていく。事故で失われたテンポ差も次第に遁減していく。
・ボムをキャストされる確率が長引けば長引くほど高くなる。
以上2つの理由から、事故りにくいアグロなデッキを使い短期決戦を目指すのは合理的と言える。
話を戻そう。マナリスクの管理と、前章で述べた『相対的デッキパワー』は切っても切れない関係にある。なぜなら、『マリガンはどんなデッキにも平等に起こりうる事象である』ためである。“細い”デッキにとっては願うべき勝ち手段であり、“太い”デッキにとっては忌避すべき負け筋なのだ。
また、デッキ以外にも枚数を考慮する観点がもう一つ。それは対戦相手の巧さだ。相手のレベルに合わせて土地枚数を調整することはプレリなどでは有効なテクニックだ。レイドデュークと私が対戦したとして、彼の負けはプレイングやカード1枚差による負けよりも、事故による負けのほうが多いだろう。力量に大きく差がある場合はデッキパワーよりも安定性をケアしたほうが全体で見た勝率はあがる。そういうわけだ。
まとめると以下のようになる、
・自分が著しく太い/あるいは対戦相手が下手だと確信したときは先手18、後手17マナソース気持ち大目ぐらいに調整。
・自分が相対的に細い/→16枚に調整
カード1枚分が勝敗を分けるリミテッドにおいて、この切り詰めは、貧者が勝つために欠かせない一手となる。
◇おわりに
いかがだっただろうか。読んでくださった方に、サイドボードに眠る脇役たちをもう一度見直してみよう、この弱プールをもう一度見直してみよう、という気持ちが少しでもわいたならば幸いである。
「Submit」ボタンを押す前にあと30秒、考えてみよう。
『我々は探求をやめてはならない。』
【参考】
・翻訳リミテッドにおけるサイドボード戦略論 by Jacob Van Lunen
http://mtgoversears.com/post-167/
・リスキー・ビジネス/危険な賭け
http://mtg-jp.com/reading/translated/bb/0017044/
・rizerシールド論(1)(2)(3)(4)
http://d.hatena.ne.jp/RIZER/20110519/1305787019
・【翻訳】Strategy And Tactics In Sideboarding - Ross Merriam
http://radish.diarynote.jp/201508021435384684/
我々は探求をやめてはならない。そして、我々のすべての探求は、最終的にはじめにいた場所に戻り、その場所をはじめて確認することである。
―イギリスの詩人、T・S・エリオット
「こちらサイドチェンジありません。」
というセリフを構築戦で聞いたことはあるだろうか?
3ゲーム目開始前にまれに聞く程度で、ほとんどの場合そんなセリフを聞くことはないはずだ。構築戦のデッキは60枚ではなく75枚で戦うもの、という認識が当たり前だからだ。どんなプレイヤーでも、バントカンパニーや、親和や、奇跡や、もしかしたらグリクシスシーフ(!)とか、メタ上に存在するさまざまなデッキを思い浮かべながらサイドボード一枚一枚とにらめっこした経験はあることだろう。
しかし、リミテッドではどうだろうか?
プールの中からボム、除去、クリーチャーを強い順に23枚・・・・よし、できた!
傍らには、ドラフトでは20枚以上、シールドなら60枚超の選ばれなかったカードたち。
構築よりも、もっともっと多いこれらサイドボードたちに眠る宝は軽視されがちだ。
この記事では、隠された宝を探す手掛かりとして、
◇【平均P/T】の変更
◇【相対的デッキパワー】の評価
◇扱う【マナリスク】の変更
の3つの視点について述べていこうと思う。
<垂直落下><帰化>以外にも、宝はその中に眠っているのだ!
◇【平均P/T】の変更
リミテッドでは一般に2/1/3よりも2/2/2、3/2/3よりも3/3/2のほうが有用とされる。
対戦相手のライフを削る早さ・交換できるカードの広さがその理由だ。
ただしそれはあくまで「一般に」でしかない。今の目的は、『目前の40枚を粉砕すること』それだけだ!
P/Tの評価はまさに相対的なもので、相手のデッキによって変わる。
以下に良くある相手のデッキと、→増やしたいP/Tを載せてみる。
・大量の2/2/1、熊とコンバットトリックで押し切る赤黒デッキ
→2/1/3 3/2/3 少数のデカブツ 3/3/2や3/2/2飛行out
・2/1/3壁、3/2/2, 4/3/2飛行で殴る青白デッキ:
→大量の3/2、2/2など地上の頭でっかち、熊in 重除去 壁out
・5/5/4、4/3/4など優秀なスタッツで殴る緑系ミッドレンジ
→4/5/2、2/3/1など。
・お互いに地上を並べ合う展開になるとき:
→限定的回避能力持ち生物(5/3/3森渡りとか)
2以上のパワー修正を与える装備品 など
デッキの平均P/Tを相手に合わせて変えることができれば、戦闘を有利に進められる。
戦闘は、リミテッドの根幹である。
すなわち勝てる!(3段論法並感)
したがって、ドラフト後半ではどうでもいいカードをカットするよりも、限定的だがあるゲームには大きな影響を与えるカード(特に生物)をピックすることをお勧めする。
◇【相対的デッキパワー】の評価
rizerさんによれば、リミテッド、とりわけシールドでは、
①対処難のボム(平均カードパワー)、②安定性(及びキルスピード)、③消耗戦のいずれかがゲームが決めるポイントとなるとある。これはまさにその通りで、デッキ構築段階からこのどれかをデッキの勝ち筋として意識することは大切だ。
話を戻そう。サイドボードに残されたカードは通常、使いどころが狭い “細い”カードであることが多い。それらを採用することはリスクを伴う。ではどのような時がそのリスクを取るべき時なのか・・・・。
それは、相手のデッキがかなり強い・・!と感じた時。戦力差を覆すリスクテイクの時だ!
通常、以下2種のどちらかの戦略に振り切ることになる。すなわち
・土地を切り詰めアグロカードを詰め込む
・色をタッチしてカードパワーの向上をはかる
の二つの戦略である。前者は①③を犠牲にし②での勝利を目指し、後者は②を犠牲にし①③での勝利を目指す戦略である。基本的には①③を目指したデッキをメインデッキとし、強いデッキに対し前者の戦略をとるのが良い。(シールドの環境によっては、この切り替えに伴い第二色の切り替えも大いに許容される。)
マリガンやマナリスク云々は次の章で述べることとして、ここでは採用するべき“細い”アグロカードについて触れる。
・ラッパやアクトなど振れ幅の大きいスペル
アクトは差し引き盤面最強2体分の、ラッパはいわずもがなな働きをする。
特にアクトは筆者大大大好きである。(愛)
・“ハマればつよい”オーラ、装備品、
「トロール皮(2G:+2/2. 1G:再生)」「ゴブリンの戦化粧(1R:+2/2 速攻)」などがそれにあたる。オーラや装備品は1:2を簡単に取られてしまうし安定せず、典型的“入れてはいけない”カード群のひとつである。しかし、リスクをとって強いデッキに立ち向かう際には、頼もしい武器にもなりうる!
軽めの回避能力持ち(飛行または威迫など)につけるのがベスト、(相手は除去をもってない!)と強く念じることが大切である。
+カウンターを載せるバットリ(道理を超えた力など)もこれに当たる。
・1UU:取り消し
「先手」で「軽いパワー2以上の回避能力を詰めて」いて「相手がミッドレンジ」の場合考慮に上がる。基本的にはテンポ損するだけのカードだし、構え続けることにコストはかかる。リミテにおける打ち消しは数あるカードの中でも最もカードパワーのブレが大きなカードである。序盤に構え続けるだけではカード一枚以下だが、アヴァシンを除去できるカードにもなりうる!
通常リミテッドでは、打ち消しはまったくケアされないのも利点である。
貧者プールでは予想以上の働きを見せることがあるので検討する価値はある。
・4/5/2、3/5/2デメリットなど前のめり
バットリではなく除去で道をこじ開けられば強いが除去があるのは強いアグロなので今回は控え目に記載。
これら細いアグロカードは、うまく使えばプール富豪に下剋上することができます。
奴隷は・・・・二度刺すっ・・・・!!
◇扱う【マナリスク】の変更
基本的に、“貧者”の側はアグロ的なデッキを組んだほうが良い。以下二つの理由による。
・つけこむべきマリガン事故の特質
貧者が速度と安定感を武器に勝つためには、相手の事故につけ込む必要がある。
活路たる7:6の最初の差が、ターンが進むにつれ、【3ターン後】→10:9 【23ターン後】→30:29と相対的に失われていく。事故で失われたテンポ差も次第に遁減していく。
・ボムをキャストされる確率が長引けば長引くほど高くなる。
以上2つの理由から、事故りにくいアグロなデッキを使い短期決戦を目指すのは合理的と言える。
話を戻そう。マナリスクの管理と、前章で述べた『相対的デッキパワー』は切っても切れない関係にある。なぜなら、『マリガンはどんなデッキにも平等に起こりうる事象である』ためである。“細い”デッキにとっては願うべき勝ち手段であり、“太い”デッキにとっては忌避すべき負け筋なのだ。
また、デッキ以外にも枚数を考慮する観点がもう一つ。それは対戦相手の巧さだ。相手のレベルに合わせて土地枚数を調整することはプレリなどでは有効なテクニックだ。レイドデュークと私が対戦したとして、彼の負けはプレイングやカード1枚差による負けよりも、事故による負けのほうが多いだろう。力量に大きく差がある場合はデッキパワーよりも安定性をケアしたほうが全体で見た勝率はあがる。そういうわけだ。
まとめると以下のようになる、
・自分が著しく太い/あるいは対戦相手が下手だと確信したときは先手18、後手17マナソース気持ち大目ぐらいに調整。
・自分が相対的に細い/→16枚に調整
カード1枚分が勝敗を分けるリミテッドにおいて、この切り詰めは、貧者が勝つために欠かせない一手となる。
◇おわりに
いかがだっただろうか。読んでくださった方に、サイドボードに眠る脇役たちをもう一度見直してみよう、この弱プールをもう一度見直してみよう、という気持ちが少しでもわいたならば幸いである。
「Submit」ボタンを押す前にあと30秒、考えてみよう。
『我々は探求をやめてはならない。』
【参考】
・翻訳リミテッドにおけるサイドボード戦略論 by Jacob Van Lunen
http://mtgoversears.com/post-167/
・リスキー・ビジネス/危険な賭け
http://mtg-jp.com/reading/translated/bb/0017044/
・rizerシールド論(1)(2)(3)(4)
http://d.hatena.ne.jp/RIZER/20110519/1305787019
・【翻訳】Strategy And Tactics In Sideboarding - Ross Merriam
http://radish.diarynote.jp/201508021435384684/
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